ハーレーライターでびゅー!

先日、原稿を書いた見本誌がやっと送られてきた。バイクになんの興味もなかった僕が書いた初めてのツーリングレポート。下調べ、取材、撮影、執筆、校正…約2ヵ月半。ツーリングレポートってほんと手間かかるわ。

以下、下版前の記事を掲載。

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 MISSION TOURING

潮風と歴史を巡る旅 姫路から広島へ。播州・山陽路400kmの旅 温暖で雨量の少ない瀬戸内地方は、年間を通してツーリングが楽しめる。 NHK大河ドラマ黒田官兵衛』で脚光を浴びる姫路城を起点に 毛利の牙城・広島まで、訪れた地は全部で10ヵ所。 いずれも古き良き日本を感じさせる場所でありながら、ハーレーと美事に調和する。 まるで絵ハガキのように美しい日米合作ツーリングをご賞味あれ。

姫路城の朝日を背に、いざ西へ  

夏は四国山地、冬は中国山地によって季節風から守られている瀬戸内地方は、年間を通してツーリングに最適のコースだ。特に、肌寒さを感じるこれからの季節は、その温暖で雨量の少ない気候がありがたい。  
秋本番のツーリングシーズンを迎え、今回レポートするのは、兵庫県姫路市から広島県広島市までの約400km。訪れたスポットは2日間で10ヵ所におよぶ。あえて高速道路は使わず、それぞれの土地の息吹が感じられるルートを選択した。  

出発地は、黒田官兵衛ブームに湧く兵庫県姫路市、官兵衛生誕の地とされる姫路城だ。オレンジ色の朝日を浴びる姫路城のあまりにもの美しさに眠気が吹き飛ぶ。国宝であり、法隆寺とともに日本で初めて世界文化遺産に登録された不戦の城は、その白く華麗な姿から「白鷺城」とも呼ばれるが、まさにその言葉を実感する。平成21年10月から始まった大天守保存修理もようやく終盤を迎え、天守閣を覆っていた囲みが取り除かれたばかりで、その白さが際立っていた。  

姫路城前に待機するのは、漆黒色のスーパーグライド・カスタム(FXDC、以下スーパーグライド)と紫飴色のソフテイルデラックス (FLSTN、以下デラックス)の2騎。官兵衛の命を受けた黒田二十四騎のごとく、いざ毛利の牙城・広島へと参ろう。  

暖かな陽光を背に受けながら、国道250号線を西へ走る。鼻孔に注ぎ込む風が鉄の匂いから潮の匂いへと変わったとたん、眼前に瀬戸内の穏やかな海が広がった。家島諸島を左手に、はりまシーサイドロードを忠臣蔵ゆかりの地・赤穂へと快走する。このあたりは通行量も少なく、爽快感を存分に味わうことができるだろう。右へ左への適度なワインディングは、早朝の準備体操のごとく身体にほどよい刺激を与えてくれる。  

プルバックバンドルバー、シート高710mmのスーパーグライドは、「日本人の体格にマッチしたビッグツイン」といえる。身長170cm、決して長いとは言えない僕の手足でもゆったりとしたライディングポジションをとることができ、行きたい方向、曲がりたい角度に気持ちよく反応してくれた。  デラックスのシート高はさらに低く、670mm。足裏がピッタリ地面に着く安心感もさることながら、ワイドハンドルバーがちょうどよいポジションに導いてくれる。また、旋回能力はかなり高く、タイトな曲がり角でもきれいにクリアできる。  

最初の訪問地、赤穂で立ち寄ったのは、元禄赤穂事件で討ち入りした大石内蔵助はじめ赤穂浪士47人を祀る大石神社だ。義士切腹満250年を記念して製作された義士木像奉安殿の木像は、平櫛田中、山崎朝雲といった当代超一流の彫刻家の手によるもので、必見。駐車場は砂地だが、平坦で広く、停めやすい。

瀬戸内の港町を通過し、備前へ  

早朝の播州路に別れを告げ、岡山県・日生市に入る。牡蠣入りのお好み焼きカキオコの看板に後ろ髪を惹かれつつ先を急ぐ。なにせ本日のミッションは、「朝日に輝く姫路城」と「夕日に浮かぶしまなみ海道」を見ることにある。まだまだ先は長い。旅はまだ始まったばかり。カキオコのシーズンは冬場だ。もう少し寒くなるまでとっておこう。

国道250号線を左に折れ、備前ICから岡山ブルーラインに入る。大石神社とともに、今回の2騎を提供いただいた「広畑日産自動車ハーレーダビッドソン事業部」おすすめのルートである。播州地方のハーレーライダー定番スポット、一本松展望園で小休憩。眼下に広がる錦海湾の眺望が心地よい。  

西大寺ICから県道28号岡山牛窓線に入り、岡山県護国神社に向かう。備前藩主・池田章政公が戊辰戦争の戦死者の招魂祭を執行したことを起源として、以降の英霊たちが祀られている。今日の平和に感謝し、戦争のない世界を願いつつ、再びビックツインを始動させる。  岡山市街から国道2号線に向かうも、さすがに交通量は多く、渋滞に巻き込まれる。ここで2騎の足付き性の良さが威力を発揮した。加えてビッグツインモデルはABS(アンチ・ロック・ブレーキシステム)を標準装備する。安心・安定のブレーキングは、本来なら苦痛であるはずの渋滞に楽しみを与えてくれた。  

早島を過ぎたあたりから再び快走路に変わる。官兵衛の時代なら備中・高松城の水攻めとなるのだろうが、世界恒久の平和を願う僕たちが向かうはノスタルジックな町並みが美しい倉敷美観地区だ。

美観地区にマッチしたスタイル  

江戸時代に幕府の天領として栄えた倉敷。メインエリアとなる美観地区は、白壁と黒瓦、柳並木が調和し、一帯は重要伝統的建築物群保存地区に指定されている。ゴーギャンやモネなど、巨匠たちによる名作を展示する大原美術館をはじめ、明治時代の倉敷紡績の建物を再生した倉敷アイビースクエアなど見どころが多く、時間があればじっくり滞在したい。  ノスタルジックな雰囲気を今に伝えるデラックスは美事なまでにこの町にとけ込んでいる。ソフテイルフレーム、油圧式フロントフォーク、トゥームストーンテールランプ、フォグランプ付きヘッドライト…紫にきらめくキャンディ塗装がさらにレトロ感を強調し、道往く観光客の足を停める。  

国道2号線を福山方面へ向かい、県道22号福山鞆線を南下し、鞆の浦へ走る。距離は短いが海沿いを快走でき、開放感があふれる。  

沼隅半島の東南端、瀬戸内海のちょうど中央に位置する鞆の浦は、江戸時代に潮待ちの港として栄えた。常夜燈をはじめ、由緒ある古寺・神社、坂本龍馬ゆかりの史跡などが点在する。1992年には都市景観100選に、2007年には美しい日本の歴史的風土100選にも選ばれた美しい場所だ。また、2008年に公開された『崖の上のポニョ』で、宮崎駿監督が構想を練った地としても知られている。  

町家をリノベーションしたレトロモダンなカフェで一息入れ、本ミッションのメインに向かおう。大林宣彦監督がこよなく愛した尾道を通過し、しまなみ海道をハーレーらしく豪快に走る。  

瀬戸内しまなみ海道は、広島県尾道市から向島因島大三島などを経て愛媛県今治市までを結ぶ約60kmのルートだ。正式には西瀬戸自動車道という。6つの島に架けられた橋は全部で10本。眼下には海と島が広がり、海上ツーリングを存分に楽しめる。  

新尾道大橋因島大橋生口橋を渡り、西日光耕三寺で知られる生口島に上陸。島の東側を南下する。通行量、信号ともに少なく、アメリカンスタイルで潮風を全身に受け止める。右手にはレモン畑、左手には海道とそのすぐ向こうに島々。これぞ瀬戸内という景観を堪能する。  

生口島大三島を結ぶ多々羅大橋を借景に夕陽を待つ。スーパーグライドのビビッドブラックなタンクに瀬戸内が写る。東の空から昇る太陽を姫路城で見た僕たちは、西の空へ沈む太陽をしまなみ海道で納めて1日目を終えた。

しまなみ海道の絶景に感動  

三原から「安芸の小京都」と言われる竹原へ向かう国道185号線は、早朝のおすすめのルートだ。しまなみの島々の間から顔を覗かせるオレンジの光が海面を照らす様は、美しすぎて言葉を失う。  

瀬戸内の海は広大とは言い難い。むしろ狭い。まっすぐな道をダイナミックに走るのもハーレーなら、海沿いのワインディングをゆったりと走るのもハーレーの醍醐味。それぞれの速度域での鼓動、ライドフィールが味わえるのがハーレーの魅力なのだ。  

広島県沿岸部のほぼ中央に位置する竹原は、江戸時代後期に製塩業や酒造業として栄えた町。豪商の屋敷や由緒ある寺、町並みが現存している。塗りごめの白壁、棒瓦の屋根、飴色の竹原格子窓が印象的だ。  

今回のミッションツーリング全行程の中で、個人的に最も好きだったのが、竹原から下蒲刈島への約35kmほどのルート。特に安芸灘とびしま海道のゲートブリッジとして、本土と下蒲刈島を結ぶ安岐灘大橋は通行料(片道560円)を払う価値大。橋長はわずか1,175mだが、2車線の吊り橋としては世界最大。ゆっくりと渡って、優れた景観美と機能美を堪能しよう。安岐灘とびしま海道は、裏しまなみ海道とも呼ばれ、瀬戸内の島々を7つの橋で結ぶ海上ルート。吊り橋、トラス橋、斜張橋、アーチ橋など、さまざまな橋の姿が楽しめ、上蒲刈島には広島を代表するリゾート地「県民の浜」があるのだが、今回は時間の関係上、下蒲刈島のみの上陸で引き返す。  

国道185号線を一路、呉へ向かう。明治時代、東洋一の軍港といわれた呉には戦艦大和をテーマにしたミュージアムや、本物の潜水艦が間近で見られる公園など、海軍の歴史が刻まれたスポットが点在する。造船の町としても知られ、海沿いにはドッグや造船工場が立ち並ぶ。  さて、いよいよ最終地、広島を目指そう。1959(天正17)年に毛利輝元が築城した広島城は、日本100名城のひとつ。天守閣からは広島市内が一望できる。  海、山、島、町、歴史、文化…さまざまな表情が楽しめた播州・山陽路2日間の旅はこれにて終了。さて、帰りは山陽自動車道を走って、秀吉ばりの「中国大返し」と行きましょうか。

ツーリングの基本は思いやり  

高速クルージングはハーレーお手の物。広島から姫路までは、山陽自動車道を使って約3時間。行きの行程が間違いだったのかと思うほど、あっけなかった。  

ソロ、タンデム、マス…ツーリングにはそれぞれの楽しみ方がある。自由気ままなソロツーリングと違い、タンデムやマスツーリングには「思いやり」が大切だ。今回は2騎のツーリングで、インカム、ETCなし。信号や曲がり角での気遣い、スタート時や発券機でのサインなど、相方の思いやりがひしひしと伝わるツーリングだった。  

帰りの高速道路では、前をゆくデラックスの動きに、スーパーグライドが同調し始めた。『イージーライダー』『ハーレーダビッドソンマルボロマン』…そのむかしからハーレーには2騎ツーリングがよく似合う。

(HOG Vol75より)